仮装身分捜査の厳格なガイドライン(実施要領)
警察庁が導入した仮装身分捜査(偽の身分証を用いた潜入捜査)について、実施要領に基づく厳格なガイドラインを以下にまとめます。
1. 適用対象犯罪
- SNS等を利用した組織的犯罪に限定
- 闇バイト型強盗
- 特殊詐欺(振り込め詐欺、投資詐欺、ロマンス詐欺など)
- 違法薬物・銃器取引(麻薬密売、違法銃器販売)
- 人身売買や売春あっせん
2. 使用できる偽の身分証の範囲
- 原則として**「画像データ」**のみ(物理的な偽造証は作成不可)
- 偽名・架空の個人情報を使用可
- 捜査対象となる犯罪グループの本人確認要請時のみ提示
- 実在する個人の名前や情報を使用してはならない
- 公的機関発行の証明書の偽造は禁止(例:パスポート、マイナンバーカード)
3. 実施許可と管理体制
- 捜査員の判断ではなく**「警察本部の上級管理職」の承認が必要**
- 必要最小限の使用に限定(漫然とした潜入捜査は禁止)
- 捜査終了後は速やかにデータを削除し、不正使用を防止
4. 目的外使用の禁止
- 犯罪グループ以外の第三者に偽の身分証を提示することは禁止
- 偽の身分情報を用いて公共サービス(銀行口座開設、賃貸契約等)を利用してはならない
- 捜査目的以外での個人情報の作成・使用は禁止
5. 証拠の適正管理
- 仮装身分での会話・取引の証拠は録音・記録し、正当な捜査であることを証明
- 収集した証拠が裁判で適法と認められるよう管理を徹底
6. 捜査員の身分保護とリスク管理
- 仮装身分捜査の対象者が危険な組織に属する場合、捜査員の身元が暴露されないよう厳重な管理
- 危険を伴う場合は即時撤退の判断を可能にする
- 捜査員の精神的負担を考慮し、専門家によるメンタルケアを提供
7. 事後報告と監査
- 捜査終了後、警察内部で事後検証を実施
- 運用が適切だったかどうか監査委員会が審査
- 法律に基づいた適正な運用がされていたか、第三者機関による監視も導入
8. 違法収集証拠の排除
- 捜査の手続きに違反があった場合、収集した証拠は裁判で違法収集証拠として排除される可能性あり
- 違法捜査が発覚した場合、関係者の処分を含めた対応を行う
このように、日本では仮装身分捜査の運用を厳格に管理し、**「目的外利用の禁止」と「適正手続きを守ること」**を強調しています。
特に、偽の身分証を「物理的に偽造」することは認められず、画像データに限定されている点が特徴です。